アナログミキサーの改造

2012年8月17日 追記

今までC37P改造からDATのライン入力に入れて2ch録音をして参りました。
アコースティック楽器の場合にはこの方式で十分だと思っています。

最近ジャズを録音してみてPAを通している処での2ch録音は制約が大変大きく
止む無くミキサーを使用してマルチマイク録音の準備をしなければならないと思った次第です。

そこでまず中古のアナログミキサーを購入して改造してみました。
デジタルミキサーも良いのですが、潰しの利くアナログミキサーにしました。

SoundTracs社のTopazMacroという14ch2AUXのミキサーです。
96年製です。





モノINは10チャンネル、ステレオINは2チャンネルの14チャンネルです。
AUXは2チャンネル、録音入出力は1系統、出力は1系統の簡易ミキサーです。






マイクインのOPアンプは「SSM2017」という超ローノイズ差動入力ICです。

その他のバンドイコライザー等はテキサスの「TL072」というJ−FET入力の2回路入りが使用されています。
出力回路の部分は「NE5532」が使用されております。

元々の電源は別トランスからAC24V−0−AC24Vが供給されて内部で整流し、

3端子レギュレーターで±15Vになり各ICに供給されます。

ファンタム電源の+48VはAC24Vの半波倍電圧整流後にレギュレーターにて+48Vが形成されています。






改造はまずマイク入力の差動アンプSSM2017(スルーレート15V/μs)は交換せず、
TL072(スルーレート13V/μs)を全てOPA2604(スルーレート25V/μs)に交換しました。
この交換だけでも25個位あります。

次にNE5532(スルーレート9V/μs)をAD826(スルーレート350V/μs)に交換しました。

この交換により音の立ち上がりが大変速くなりモノインプット毎の音色変化が無くなりました。


2007年5月に大幅な変更をしました。

グライコの部分のOPA2604(スルーレート25V/μs)をTLE2142IP(スルーレート45V/μs)に変更し、
グライコ以降はAD826に全て交換しました。
ch1〜ch4はグライコの部分もAD826(スルーレート350V/μs)に交換しました。

全体に音が軽く柔らかくなり、きつさが減少しました。
そして楽器の響きが立体的になりホールやスタジオの響きと
融和しながら分離します。


改造後の電源は下記の電源より供給され、
アナログ電源は本体内部で又2段カスケード定電圧電源を通して供給します。
ヘッドアンプとイコライザ、出力部は各々別の定電圧電源にしています。

ファンタム電源もここでもう1段定電圧電源を通して供給します。


2011年3月20日 

グライコの部分は全てAD826に交換し、
各フェーダーの出力部以降は全て
LM6172にしました。

内部の定電圧電源回路もより高速にしました。

これにより音の立ち上がり下がりが劇的に速くなり、
音と音場が大変静かになりました。

LM6172はDualタイプで、シングルタイプはLM6171です。
このLM6171ですが、大変低歪みです。

当方の測定器群は発振器の歪が
1KHzで0.001%
10KHzで0.0015%です。

ところがLM6171の歪を測定すると
発振器の歪と同じ
1KHZで0.001%,10KHzで0.0015%
でした。






次に電源部の製作です。




ノーマルは本体にAC24V2回路を供給して整流・制御していましたが、
アナログICの交換後消費電流が増えたのとノイズの混入を防ぐため
新たに電源回路を製作しました。

シャーシは市販のタカチの測定器用を購入しました。






PTはRコア150VAを2個搭載し、コンデンサーは47000μFを2個使用しました。
現在は
82,000μFに交換しております。
電源だけでもトータル100,000μF×2は使用しています。
電源コンデンサーの容量が巨大なのでラッシュ電流で10Aの整流ダイオードを壊してしまいました。
そのためその後は
35Aの整流ダイオードをパラ接続にしています。

ラッシュカレント保護のために1次側に抵抗を入れて2秒後にショートさせるように
タイムリレーを入れています。





上の画像のように定電圧電源を3段カスケードにしています。
制御トランジスターは東芝製の
耐圧230V定格電流15A最大損失150Wですので、
相当電流を流しても、又誤ってショートさせても壊れ難いです。

カスケードによる発振への対策は測定器で観測しながら施してます。

ファンタム電源用の電源は半波倍電圧整流にて作り、定電圧電源にて本体に供給しています。

ここでプラスマイナス20V4Aとプラス55V0.5Aを供給しています。




2012年8月17日 追記


最近はミキサーからの電源でADCを駆動したり、
サンケンのCMS−2 MSマイクの+48Vファンタム電源も供給しています。

そのため心無しかオーバーロードぎみになっていたので
新しく大型の電源を製作しました。








電源トランスは中古で頂いたものを使用しています。
34V−0−34V 5.6A 仕様です。

電源コンデンサーも中古で50V100,000μFを4本使用しました。





電源コンデンサーの容量が巨大なので、電源保護の抵抗を入れて
オムロンの遅延リレーにて約3秒後にこの抵抗をショートさせています。

小さいトランスは
ADCのデジタル回路用の電源トランスです。





定電圧電源の制御トランジスタです。
40−50万円クラスのアンプより強力です。

大きいトランジスタはサンケン製の200W17A×4個
中型のトランジスタは東芝製の150W15A×6個




ファンタム電源用の+53.5Vは
半波倍電圧整流回路によりDC100Vを作って
2段定電圧電源回路にてDC70V⇒DC53.5Vを作っています。

Mixer内部の定電圧電源でファンタム電圧の
DC48Vにしています。





この回路群で
アナログ回路用 ±20.5V
ファンタム電源用 +53.5V
デジタル回路用 +10V
を作っています。






高級ミキサーの電源回路でも
ここまで徹底しているのは少ないでしょう。

当方が所有している
SoundTracsのFMEシリーズ16chミキサーの外部電源は
残念ながら上記の
古い外部電源より遥かに貧疎ですよ。
音質もその通りです。








このミキサーを製作した電源で使用出来るようにしようかと思案中です。

仕様の変更は簡単ですが、
ミキサー内部の電源回路の変更と、
オペアンプの交換が大変難しいです。